コト消費からトキ消費の時代へ?インフルエンサーマーケティングとの関係は?

高度経済成長期以降の日本人の消費行動は、いわゆる三種の神器や3Cをはじめとして、ブランド品や高級品など、「モノ」の所有価値に重きを置いていました。
しかし、彼らが物質的に満たされるようになってくると、今度は旅行や文化体験といった「コト」、つまり経験・体験に価値を見出すようになりました。これが、2000年代に入り指摘されてきたモノ消費からコト消費への転換で、ご存知の方も多いでしょう。

そしてスマートフォンやSNSが台頭している現在、コト消費から『トキ消費』へという新たな転換が起こりつつあります。

コト消費の陳腐化

2010年代以降、スマートフォンの急速な普及もあり、人々の体験に関する情報が写真や映像などとともにインターネット、SNS上に溢れ、簡単にいろいろな人のコト消費を疑似体験できるようになりました。
それにより、従来のコト消費の価値は薄れ、人々の「やってみたい!行ってみたい!」という欲求が生まれにくくなっています。そこで提唱されるようになったのが、「トキ消費」という新たな価値観です。

トキ消費とは?

「トキ消費」とは、同じ志向を持つ人々と一緒に、その時、その場でしか味わえない盛り上がりを共有することを楽しむ消費行動です。ハロウィン、フェス、アイドルの総選挙などが代表的事例としてあげられます。また、大いに盛り上がりを見せたサッカーワールドカップもトキ消費の典型です。

トキ消費は、三つの大きな特徴を持っています。
一つ目は、時間や場所が限定されていて同じ体験が二度とできないという「非再現性」、二つ目が、傍観者としてコンテンツを消費するだけではなく、主体的に参加することが目的の運動体であるという「参加性」、そして三つ目が、参加した成果が目に見えてわかり、貢献していることが実感できるという「貢献性」です。
例えばワールドカップは、試合をリアルタイムで観ながら仲間と盛り上がるという体験は二度とできないという点で「非再現性」があり、試合を見て楽しむだけではなく、スポーツバーや自宅、あるいはスタジアムで、仲間と自国を応援することが目的であるという点で「参加性」があり、そしてその応援の成果がチームの勝敗として表れるという点で「貢献性」があります。

モノもコトも溢れかえっている今の時代では、「非再現性」「参加性」「貢献性」という3つの要素を併せ持った仕組みによって、今この瞬間にしか享受することのできない楽しみに価値を置く「トキ消費」が立ち上がってきています。

参考記事:【キーワード解説】「トキ消費」ー博報堂生活総合研究所 酒井崇匡
 

企業の取り組み

実際に、企業も「トキ消費」のトレンドを踏まえた取り組みを多く打ち出しています。
例えば、国内有数の遊園地であるUSJでは、期間限定の来場者参加型ショーイベントである「ミニオン・スノーファイト」が開催されています。大勢の来場者がバトルに参加し、勝者には雪が降り注ぐという内容ですが、これは不作為的に集まった人たちと協力するという「非再現性」、従来のようにショーを鑑賞するだけでなく、大勢でバトルに参加するという「参加性」、勝者には雪が降り注ぎ、貢献を実感できるという「貢献性」の三要素をしっかりと満たしています。
こちらはワールドビジネスサテライトでも取り上げられていました。
また、THECOOは株式会社が開催している共感型アート展「VINYL MUSEUM」もその一つで、その時、その場でしか味わえない非日常空間を提供しています。

インフルエンサーマーケティングとの関係は?

インフルエンサーマーケティングでは、まさに自らのコト消費を発信し続けているユーチューバーやインスタグラマーの影響力を利用しています。
しかし、このコト消費からトキ消費への転換という点から見ると、視聴者やフォロワーはインフルエンサーの発信するコト消費を疑似体験するだけで満足し、実際に消費活動を行うには至らないだろうという考え方もできます。
少し極端な話をしましたが、もし本当に「トキ消費」が今後の人々の消費のトレンドとなっていくのであれば、「非再現性」「参加性」「貢献性」を満たす新たなインフルエンサーマーケティングのあり方を考える必要が出てくるかも知れません。