SNSのフォロワーが消える?偽アカウントの実態とは

ユーザー数の増え続けるツイッター、フェイスブック、インスタグラムといったSNSですが、それに伴い、他人になりすまし作成されたり、実体が存在しなかったりといった、いわゆる「偽アカウント(フェイクアカウント)」が蔓延しています。

偽アカウントの一斉削除

ツイッターとフェイスブックの米SNS2社が今年1月以降、計7億件もの偽アカウントを削除したことがわかりました。特に、ツイッター社が7月上旬に行った数千万件規模の一斉削除では、多くの著名人のフォロワーが大幅に減少することとなり、世界中に衝撃を与えました。例えば、アメリカの人気歌手であるケイティ・ペリーさんやレディ・ガガさんのフォロワー数はいずれも約250万減少したほか、バラク・オバマ元大統領のアカウントからは約240万、ドナルド・トランプ大統領のアカウントからは約34万のフォロワーが消えてしまいました。日本では、AKB48の柏木由紀さんが約4.7万減少したほか、仮面少女の神谷えりなさんに至っては実に全フォロワーの38%に当たる約47万のフォロワーが消え、大きく話題となりました。(出典:消えた7億フォロワー、揺れる「いいね!」経済
そもそも、なぜこのような偽アカウントが作られるのでしょうか?

偽アカウントはなんのために作られるのか

削除の対象となるような偽アカウントは、主に以下の2つのパターンに大別されます。

①不要な広告やプロパガンダを広める偽アカウント

一つは、一般人のアカウントと見せかけてたくさんのユーザーをフォローし、不要な広告やプロパガンダ(政治的な宣伝)を広めようとするパターンです。機械的にフォローしてきて怪しい儲け話を持ちかけてくるアカウントや、有名人のリプライ欄に張り付いて偏った政治的意見を発信し続けるアカウントは、その典型例です。自動で投稿をし続ける「bot」と呼ばれるアカウントがフェイクニュースなどを拡散する場合もあります。
今回のツイッター社のアカウント削除の背景には、イギリスの選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカが、アメリカ大統領選挙やEU離脱国民投票においてSNSを利用した心理戦を行ったという疑惑があります。今年11月にアメリカで中間選挙が予定されていることを踏まえ、情報工作を未然に防ぐために、偽アカウント対策に踏み切ったのです。
こうしたSNSを利用した情報工作は手軽な上に、低コストで実行可能であるという特徴があります。SNS各社は、SNSの信頼性を揺るがすこれらのスパムやフェイクニュースへの対策を求められています。

②フォロワー数やエンゲージメントを水増しする偽アカウント

もう一つは、ユーザーがフォロワー数の水増しのために大量の偽アカウントにフォローさせるパターンです。こうした偽アカウントの多くがフォローした後は休眠状態になりますが、中には機械的に特定のユーザーの投稿をリツイート、いいねするものもあります。
もちろん、フォロワーやいいねの販売・購入は規約違反ですが、現在ネット上にはツイッターやインスタグラム等の偽フォロワーを販売するサイトで溢れています。今年1月には、米フロリダ州にある企業が、実際に存在する人の画像や名前を大量に盗用して偽アカウントを作成し、フォロワーが欲しい企業や個人に販売するサービスを行っていることがニューヨーク・タイムズによってスクープされ、大きな問題となりました。
ユーザーはこうしたところからフォロワーを買うことで、自らの影響力や社会的価値を高く見せようとするのです。
ただし、前述の有名人たちが自らフォロワーを意図的に水増ししたと断定することはできません。ファンや支援者が勝手に偽アカウントを作ってフォローしていた可能性も大いに考えられます。その真相は闇の中です。

SNSユーザーに求められることは?

これらの偽アカウントに惑わされず、安全にSNSを利用するためには、何が求められるのでしょうか?それは、メディア・リテラシーを持ち、「ウソをウソと見抜く」能力を身につけることです。
ここ数年でSNSが急速に台頭し、世の中に出回る情報量はさらに膨大になりました。しかしそれに伴い、ウソの情報や間違った情報が蔓延するようになったのも事実です。そのような時代において、SNS上に氾濫した情報の中から正しいものを判断し、選び出して活用することが今まで以上に必要とされます。
例えば、一見なんの変哲もない普通のアカウントがフォローしてきたように思えても、実はスパムアカウントである可能性があります。プロフィールやツイート内容をよく見て、少しでも違和感を感じたらフォローするのはやめておくのが賢明です。
また、フォロワー数やエンゲージメント数が多いからという理由だけで、そのユーザーのことを盲信してしまうのも危険です。そのフォロワーやエンゲージメントは、大量の偽アカウントによって水増しされているかもしれません。

インフルエンサーマーケティングに与える影響

インフルエンサーマーケティングは、SNS上で強い影響力を持つインフルエンサーを企業が活用し、消費者の購買行動にアプローチするマーケティング手法です。しかし、偽アカウントの蔓延により、フォロワー数やエンゲージメント数が多いというだけでは、そのユーザーが本当に影響力、人気があり、インフルエンサーとなりうるとは断定できなくなりました。偽アカウントは、企業がインフルエンサーを選定する際の障害となるのです。

まとめ

ユーザーにとって有害な情報を流したり、影響力を誇張して見せたりする偽アカウント。ツイッター社やフェイスブック社によるアカウント削除のような、運営側の対策はもちろんのこと、ウソの情報に惑わされない力を身につけるという、ユーザー側の対策も重要になります。
ますます情報量が増えてゆくSNSですが、偽アカウントに騙されることなく、安全な利用を心がけましょう。