6月20日(水)、Instagramは月間アクティブユーザー数(MAU)が10億に達したことを発表しました。
そんな華々しい躍進を続けるInstagramですが、Instagram内の新機能であり、Instagram派生の新アプリでもある「IGTV」をリリースしました。
今回はIGTVの特徴や背景を踏まえつつ、IGTVのライバルとなりうる存在など、関連領域を含めてご紹介いたします。
IGTVとは
IGTVは動画共有サービスです。これまでのInstagramは画像を主にしており、投稿できる動画の長さは1分間に制限されていましたが、IGTVでは最長で1時間の動画を視聴することができます。IGTV専用アプリも存在しますが、インストールしなくてもInstagramアプリ上でIGTVの機能を利用することが可能です。それでは、いくつかの観点から特徴を説明いたします。
縦型動画専用である
YouTubeをはじめとするインターネット上のほとんどの動画コンテンツは横型の動画である中、IGTVは縦型のフルスクリーン動画専用としてデザインされています。
若者たちのTV離れが叫ばれている現在、TV向きにフォーマットされた横向きの動画をスマートフォンで視聴する時代に終止符を打つかのような挑戦的な特徴と言えるのではないでしょうか。
UI、操作性がシンプルでTVらしい
UIとはユーザーインターフェイス(User Interface)の略で、OSやアプリの表示画面や操作方法がこれにあたります。
Instagramのタイムライン右上に位置するテレビアイコンをタップするとIGTVページに飛ぶことができます。
操作方法はいたってシンプルで、通常の検索機能も存在するものの、IGTV操作における最大の特徴はスワイプによる動画の切り替えに集約されています。
①横にスワイプ
IGTVは、Instagramでフォローしているクリエイターや、趣味・関心に関連するおすすめのクリエイターによるコンテンツが最初から表示されるようになっており、ユーザーは横にスワイプすることで動画を切り替えることができます。
この点から、IGTVはその他の動画共有サイトと異なり、目的の動画を検索して視聴するのではなく、ダラダラとテレビを見るような感覚で動画を次々と楽しんでもらいたいという狙いが感じ取れます。
おそらく、ほとんどのユーザーは興味が惹かれる動画が見つかるまで、まるでTVをザッピングするように横にスワイプし続けるのではないでしょうか。
②上にスワイプ
また、上にスワイプすることで [おすすめ]、[フォロー中]、[人気]、[視聴を再開] という4つのメニューから好きなものに切り替えて、さまざまな動画を視聴することができます。
動画を横や上にスワイプして切り替えるという行為はInstagramのストーリーズと同様です。つまり、Instagramを利用してきたIGTVユーザーにとって、これらの行為は既に慣れ親しんだ操作として身体に染み付いているのです。Instagramユーザーは違和感を感じることなくIGTVへと移行できるように教育させられていたとさえ言えるかもしれません。
スワイプに着目して操作性をご紹介しましたが、常にスマートフォンを眺め、多くのアプリを並行しながら利用するスピード感を持った若者たちにとって、IGTVの感覚は十分にフィットする可能性が高いと思います。
このシンプルなUIは中高生を中心に大ブームとなっているアプリ、TikTokに通じる点が感じ取れます。現代の若者のツボをしっかりと押さえた非常に使い勝手の良いプロダクトに仕上がっていると言えるでしょう。
広告がない
現時点ではIGTVに広告表示が一切ありません。ユーザーにとってはストレスレスで快適に利用できる状態でしょう。
しかし、広告がないということは同時に、クリエイター側のマネタイズ手段が明確でないというデメリットも生じてしまいます。
IGTVがこれからより一層盛り上がっていくコンテンツになる為には、本格的に参入する質の高いクリエイターや企業たちの存在が必要になってくると思いますが、それを実現するにはやはりマネタイズの仕組みが必要になってくるでしょう。なお、InstagramのCEO、Kevin Systrom氏は今後なんかしらの形で収入を得られるようにすると公言しています。
IGTVのライバルとは
現在、若者において最も勢いがあるアプリとも言えるInstagramによる動画共有サービスへの参入は、早速あらゆる方面に影響を与えています。流行り廃りが激しいインターネット業界において、IGTVのライバルとなりうる存在について考えます。
YouTube
やはり、ライバルとして真っ先に思い浮かぶのは世界最大の動画共有サイトであるYouTubeでしょう。Instagramが「IGTV」を発表した翌日、YouTubeは対抗するかのように新たなマネタイズ制度に関するアナウンスを行ないました。
広告表示がなくマネタイズに関する制度が整っていないIGTVのウィークポイントに付け入るような発表です。
Facebook傘下のInstagramvsGoogle傘下のYouTubeという構図になっており、動画共有サイトにおける熾烈な覇権争いが繰り広げられていくのではないでしょうか。
AbemaTV
開局1年9ヶ月で累計2,600万ダウンロード、月間アクティブユーザー数(MAU)は1,000万を突破したAbemaTVとは、コンセプトやUIなどに共通するところがあります。2017年4月にサイバーエージェントがテレビ朝日と立ち上げたインターネットTVである「AbemaTV」は、TVを見なくなった人、TVを持たなくなった人が増えてきている現状において、スマホからTVを視聴する習慣をつくり、新たなマスメディアをつくるというコンセプトを基にスタートしたコンテンツです。
AbemaTVのプロモーションや番組作りは完全にTV的なものになっており、現在の地上波TVの代替となる存在を目指している事がうかがえますが、IGTVはもっとカジュアルでシンプルなコンテンツを目指しているように思えます。
しかし、YouTube等の動画共有サイトが検索によって視聴するシステム、いわば「能動的視聴」を要求するものであるとすれば、AbemaTVとIGTVはザッピングを基本とするシステム、いわば「受動的視聴」を提供するインターネットTVであるという点で一致しており、ユーザー層が完全に一致することはないにせよ、少なからず互いに影響を与え合うような存在になっていくのかもしれません。
TikTok
中国を中心に日本を含むアジア圏で大流行中の動画共有アプリTikTokもライバルとなりうる存在でしょう。UI、操作性などに共通点がいくつか見受けられますが、IGTVとTikTokではユーザーの楽しみ方の性質が異なります。
IGTVは、ユーザーが自ら動画を投稿、発信する楽しみ方よりも、先ほど「受動的視聴」と表現したTVらしいエンタメとして楽しんでもらいたいという思いが感じられます。
一方で、TikTokは視聴する楽しさを提供した上で、ユーザーたちが動画を投稿して共有したくなる楽しみ方、盛り上がり方を演出していきたいという狙いがうかがえます。
つまり、UIは近いものの、UXは全く違うといっても過言ではないのです。
大流行中のTikTokですが、一過性のブームとなってしまうのか、それとも若者たちの必須ツールとなって日常の一部になっていくのかという点も含めて、IGTVとTikTokの動向からは目が離せません。
まとめ
InstagramのCEO、Kevin Systrom氏はIGTVの発表イベントにて「スマートフォンでもっと簡単に動画を探して見ることができるようになる」と語りました。
Instagramが築き上げたブランド力を兼ね備えた新機能、IGTVはこれからもっと成長していくコンテンツとなるはずです。IGTVが世間に浸透していけば、Instagrammerの影響力は更に高まるでしょう。ゆくゆくはYouTuberに代わる新たな存在として「IGTVer」なんて存在が生まれる日も来るかもしれません。
Instagramは若者を中心にすっかり日常に溶け込んだ存在となりました。IGTVもまた、テレビに代わるエンターテイメントとして人々の新しい日常の一部となりうるポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。