中国国内で注目のインフルエンサーマーケティング、その規模・影響力は?

中国版インフルエンサーマーケティングとは?

現在日本では、SNSの普及により企業の商品やサービスの広告としてインフルエンサーを起用するインフルエンサーマーケティングが広がりを見せています。
そして世界一の人口を誇る隣国の中国でもインフルエンサーマーケティングは広告の形として主流のものになりつつあります。
しかし、中国では普段私たちが利用しているFacebookやTwitterなどのSNS、GoogleやYouTubeなどのインターネットサービスは利用できないため中国独自のSNSなどが発展し、その中でインフルエンサーマーケティングが行われています。
その実態は日本のインフルエンサーマーケティングとは規模や様子が大きく異なります。
今回は普段私たちが目にしない中国独自のSNS内で行われているインフルエンサーマーケティングについてご紹介します。

中国のSNS、インターネットサービス

私たちが普段利用するSNSやインターネットサービスが利用できない中国で普及している代表的なSNS、インターネットサービスを紹介します。

微博(weibo)


中国圏で最も大きなソーシャルメディアとして利用されているものが「微博(weibo)」です。
weiboは不特定多数と交流できるオープンなSNSメディアであり、Twitterと同じく、気軽に投稿ができ、拡散能力が高いことが特徴です。多くの中国人が商品の調査、選別、消費する際に様々な方法で活用しており、消費者に情報を届けるマーケティングツールの手段として注目されています。
現在weiboの利用者は7億人を超えており、公式アカウント数は291万件、企業の公式アカウントのは137万件存在しています。
これらの数字からも世界一の人口を誇る中国のソーシャルメディア規模の大きさがわかります。
出典 https://jp.weibo.com/z/

微信(WeChat)


weiboよりも個人的な連絡などに使われるSNSツールが「微信(WeChat)」です。
WeChatは中国で最も利用されているメッセージアプリであり、日本で利用されているLINEに近い機能となっています。
このWeChatの特徴としてあげられるのが「WeChat Payment」という機能が利用できることです。
この機能は、WeChatに銀行口座を登録し、QRコードを取得することでそのQRコードから決済が可能となるものです。
QRコードによる電子決済は、現金を持ち運ぶ必要がなくなる、スムーズに決済が完了するなどのメリットがあるため中国では広く普及しています。

淘宝網(タオバオ)


「淘宝網(タオバオ)」とは多くの中国のネットユーザーが利用している中国最王手のECサイトであり、EC流通総額の約8割を占めています。
イメージとしてはAmazonや楽天市場といった私たちの身近なサービスに近いものですが、少し異なる部分も存在します。
それはタオバオには個人の売り手と買い手を結びつけるサービスがある点です。
ここで注目されるのがタオバオのライブコマースプラットフォームとしての機能です。
ライブコマースとは著名人やインフルエンサーから一般ユーザーまで、スマートフォンでライブストリーミングを行い、その配信を通じてモノを売るECのことです。
ダミー商品などが多く流通している中国だからこそ、ライブ配信や配信者への信頼がダミーではなく本物であるという根拠になっているのです。
驚くべきことに過去にはこのライブコマースによって2時間で約3億円を売り上げた配信者も現れました。

中国版インフルエンサーKOLとは?

KOLとは Key Opinion Leader の略称であり、もともとは医療業界で多方面に影響力を持つ医師のことを指す言葉でした。
しかし、最近では前述の中国版SNSで大きな影響力と拡散力を持つ人物を指す言葉としても使われています。
インフルエンサーという言葉は一般的にInstagramやYouTubeなど世界中で利用されるSNSで影響力のある人のことを指しますが、KOLは中国圏内で影響力のある人を指す言葉となりました。
KOLにはもちろん芸能人の方々も含まれますが、コスメやファッションなどといったある分野に特化した一般人の中から生まれることも珍しくありません。
中国におけるインフルエンサーマーケティングはこのKOLと呼ばれる人々を用いて行われています。
中国におけるインフルエンサーマーケティングの特徴はその市場規模の大きさとKOLの中国人に対する影響力の大きさです。
世界第1位の人口を誇る中国におけるEC市場規模は70兆円以上と言われており、そのEC市場の鍵を握るのがKOLと呼ばれる人々です。
ダミー商品などが多く流通している中国ではKOLへの信頼がとても厚く、世界的に見て早い段階からKOLを用いた商品のプロモーションが行われてきており、主流となりつつあります。
現時点においてKOLをフォローしているファンは中国全体で5.88憶人にも達しており、またフォロワー数が4800万人以上のKOLも存在し、中国国内におけるKOLへの信頼と影響力の大きさが伺えます。
5000万人以上のファンを抱える人気KOLの張大奕さん

出典 https://www.wwdjapan.com/453881

ライブコマースによるプロモーション

中国における商品プロモーションの手段として大きな注目を浴びているものにライブコマースを用いた商品プロモーションがあります。
これはKOLがライブ配信で実際に使った商品などを紹介し、リアルタイムで視聴している視聴者からの質問などにリアクションなどをしながら行う商品のプロモーションです。
視聴者はそのライブ配信を見て商品が欲しいと思ったら配信画面から即座に購入することができます。
中国ではこのライブコマースがとても人気であり、2015年前後の早い段階からプラットフォームが登場し多くのユーザーからの支持を集めています。
日本でも「ツイキャス」「ニコニコ動画」などのライブ配信プラットフォームは存在していましたが、「ライブ配信」と商品の購入を促す「コマース」は分離していました。
ライブコマースが日本国内で注目され専用のプラットフォームが誕生したのは最近のことであり、まだまだ浸透しているとは言えません。
中国国内ではライブコマースによるプロモーションはKOLへの厚い信頼などから現在では主流となっています。
実際のライブコマースの様子

出典 http://www.clips-web.co.jp/chinablog/2017/05/01/post-2290/
人気の理由としてあげられるのがライブ配信ならではのコンテンツです。
ファッション分野に特化したKOLが視聴者のリクエストに応じて画面の前で様々な服の生着替えをリアルタイムで行い、その着用感やサイズ感をライブで実況してくれるというライブコマースがあります。
視聴者がイメージしやすいように試着している人の身長や体重などを画面に記載するという工夫も施されています。
実際に着た時のイメージが湧きやすいという理由から多くのライブ配信を見た視聴者が紹介された服を購入しています。
また、人気のKOLである張大奕さんが新作ブランドの立ち上げをライブ配信で発表し、ライブコマースを使って自らそのブランドの商品や制作過程を紹介するライブ配信も行われました。
ライブでの新作ブランドの発表は瞬く間に話題となり41万人が生放送を視聴し、100万いいね! を獲得しました。
結果的にこのライブ配信では2時間で約3億円を売り上げ、ライブコマースの影響力を象徴する出来事として大きな話題となりました。
出典 https://www.recordchina.co.jp/b180977-s0-c70-d0044.html
ライブコマースで視聴者からの質問に答えながらコートの紹介をする張大奕さん

出典 http://thebridge.jp/2017/04/fashion-influencers-in-china-a-new-force-for-retail-wanghong
ライブコマースを用いて紹介する人や紹介される商品は様々で、生活感のある部屋でメイクをしながらコスメの紹介をしている女性やスポーツ用品を紹介しているフィットネスコーチ、茶畑を見せているお茶の販売者など様々な人々が利用しています。
最近の動きとしてメルカリがアプリにライブコマース機能をつけたりと、ライブコマースは注目されつつあります。
今後も世界的にもライブコマースが主流となる日も近いかもしれません。

まとめ

今回は中国のインフルエンサーマーケティングについてご紹介しました。
中国には独自のSNSやインターネットサービスが普及しているため、日本とはインフルエンサーの特徴もインフルエンサーマーケティングの手法や影響も大きく異なります。
しかし、KOLと呼ばれる中国圏内におけるインフルエンサーが世界的にも影響力を持ち始めたり、ライブコマースなどの中国のインフルエンサーマーケティングの手法が世界的にも広まりを見せつつあります。
今後も中国のインフルエンサーマーケティングからは目を離せません。