近年インフルエンサーマーケティングへの関心が高まる中、広告主向けにインフルエンサーマーケティングを提案・提供する企業も様々なメニュー・サービスを打ち出しています。
今回ご登場いただくのは「GLAM(グラム)」などのファッション・ビューティーにフォーカスしたメディアとアドネットワークを運営するモードメディア・ジャパン株式会社。
「メディア」としての印象が強いモードメディア・ジャパンですが、実はインフルエンサーマーケティングを提供する企業としての顔も持ち合わせています。
最近ではTHECOO株式会社が開発提供するiCON Suiteを導入し、広告主への提案に利用されています。
モードメディア・ジャパン株式会社 レベニューデリバリー ディレクター
鈴木雅之(Masayuki Suzuki)さん、
アドバタイジングセールス マーケティングプランナー マネージャー
和泉仁(Jin Izumi)さん、
お二方にお話を伺いました。
#インタビュアー:THECOO株式会社 下川 / 國分
モードメディアのインフルエンサーマーケティング、その歴史は長く
鈴木さん:広告事業のアドオペレーションの部門を管轄しています。純広告のアドネットワークを中心に、広告の在庫管理や案件実施時の利益管理、広告配信設定や掲載開始後の進捗管理、掲載終了後のレポート作成や結果分析などを行っています。
また、新しい広告フォーマットの企画、開発や導入推進や、GLAMなどの自社メディアおよびネットワークサイトでのタイアップ案件実施時の、技術面での実装なども担当しています。
和泉さん:会社の様々なリソースを組み合わせてプランニングして、広告主に提案するというのが私の仕事です。
「インフルエンサー+広告+メディア」と組み合わせたプロモーショーンを広告主に提案していくのが我々の特色だと思います。
和泉さん:北米のブロガーが発祥です。
北米ではブロガーというのは、自分自身で専門的なWebサイトを運営している人たちのことを指します。
従来よりモードメディアは、そういったブロガーが運営するWebサイト内の広告枠を扱って来ました。
SNSが普及するにつれ、もともと自分のWebサイト・ブログで情報発信してきたブロガー達も、次第にFacebook、Pinterest、Instagramを使って発信していくようになります。
ブロガー達がSNSに活動の幅を広げる中で、モードメディアも彼らのSNSメディアの取扱をするようになりました。
この北米での流れがあって、日本でも同様にビジネスを始めました。
もともと、モードメディアのアドネットワーク自体が、質の高いコンテンツを作っているメディアのみを集めてネットワーク化している、という特徴があります。
「クオリティの高いコンテンツを作れる」という大きなくくりの中で、インフルエンサーも一般のメディアと同様に捉えています。
Instagramに関しては、まだユーザーも少なかった4年くらい前から取り組んでいます。
インフルエンサーマーケティングに取り組んでいる広告主とは?
和泉さん:モードメディアが提供する広告メニュー自体は、「女性向け・主婦向け・男性向け」と分かれていますが、女性向けが中心です。
広告主の業種でいうと、化粧品、消費財が特に大きいですね。次いで、ファッション、ラグジュアリー。
2020年の東京オリンピックの開催が決まってからは、トラベル関係も増えています。エアライン、ホテル、宿泊サイトなどです。
インフルエンサーへのニーズは、2015年末頃から徐々に増えて来ました。特に外資系の広告主が多いです。今年、2017年に入ってからは問い合わせが絶えない状況ですね。
和泉さん:業種ごとに異なりますね。
消費財だと、「既に認知されていて共感を得やすいタイプの人」「主婦っぽい人」などです。
ファッション・アパレル関係だと、「これから話題になるだろう人」、「今まさに話題になっている人」、「きちんと自分のテイストで発信している人」などです。例えば「雑誌の新人モデル」のような人ですね。
美容関係だと、「こだわりの強い人」ですね。美容、肌、美白、などにこだわっている人。
旅行関係だと、実際に頻繁に旅行に行っていて、投稿内容がほぼ旅行で埋まっているような人です。
和泉さん:広告主の規模やマーケティングの目的に応じて手法が大きく異なります。
例えば、アパレルの広告主の場合、きちんと商品を見せて、ECでの商品販売にすぐに繋げていきたい、というところが多い。
その場合、起用するインフルエンサーのフォロワー数が多いことはあまり重要ではありません。
それよりも、「どんな人に投稿してもらうべきか?」を練って提案することが求められます。
一方で、消費財の場合は認知を獲得することが目的なので、起用するインフルエンサーのフォロワー数が非常に重要です。「フォロワーの数」が提案のポイントです。
アパレルはそもそも商品のロットが小さく、100も売れれば完売。消費財は大量に売らなければならない、というそれぞれの業態によるところもあるでしょう。
かつては、単純な「フォロワー数 x 単価 」という計算のもと、「広告予算いくらで、何万フォロワーを提供します」という売り方が当たり前だったこともありますが、今では、きちんとマーケティングの目的に応じた提案を求められることが増えてきています。
広告主にとってのインフルエンサーマーケティング実施の狙いとは?
和泉さん:フォロワーの属性が大事だと考えています。
実際、インフルエンサーのフォロワーの属性を考慮せずに、投稿するインフルエンサーの属性だけをみて起用を検討するケースは少なくありません。
「30代女性向けの商品だから30代女性のインフルエンサーに投稿して欲しい」
という相談を受けることもありますが、それが本当に正しいのか、深掘りして提案するようにしています。
女性インフルエンサーと一口にいっても、男性のフォロワーが多い女性インフルエンサーもいれば、女性が憧れる女性インフルエンサーもいます。
女性向けの訴求を行うのであれば、女性フォロワーが多い男性を起用するという方法もあって良いはずです。
和泉さん:「インフルエンサーが効果良いと聞いた」、「(外資系の広告主など)本国の指示でやらなきゃいけないから」、といったように、目的が曖昧なままで実施されるケースもあります。そうなると、セールスの現場からは「インフルエンサーを起用したけれど、モノが売れないじゃないか」といった声が出てくる。
例えば、Instagramは現状はリンクを張って販売サイトに誘導するようなことはできません。そもそもダイレクトレスポンスには直結しづらい施策です。
一方で、目前の売上だけでなく、長い目でみなければいけない指標もあります。
広告主の公式アカウントを盛り上げていくことも必要となります。
広告主のイメージと、実際のインフルエンサーマーケティングの役割とのギャップを埋めていくことが重要です。
インフルエンサーマーケティングのプランニングを効率化するために
鈴木さん:従来は、提案候補のインフルエンサーを探すとき、過去から蓄積したインフルエンサーのExcelデータを都度引っ張り出してきて検索していました。それが負荷になっていました。
これに対して「一括で検索、管理できないか?」、という課題感はありました。
iCON Suiteではオンラインでインフルエンサーを検索できるという事を知って、試してみようという話になりました。
実際に、インフルエンサーのリストの管理、その後の施策へのアサインがスムーズに行くのであれば使う価値があると。
また、新しいインフルエンサー探すツールとしての期待も大きかったです。
もちろん自社で、起用候補となるインフルエンサーのリストは持っているのですが、まだ把握していない候補群があるのではないかと考えていました。
鈴木さん:単に数字を漠然と出すだけでなく、グラフなどで視覚化されている点はとても使いやすいですね。
各インフルエンサーがどういうSNSをやっているかひと目で分かる点も重宝しています。
Instagramだけなのか、YouTubeもやっているのか、などすぐに把握できて便利です。
自社でも各インフルエンサーの経歴や得意な分野、といった情報は当然持っているものの
それがひと目で数字でわかるという点に価値を感じています。散らばっていた情報が統合されて、可視化できた点は大きいです。
鈴木さん:ターゲットしたい方の年齢性別で検索条件を絞り込めるのは便利です。
肌感でこのインフルエンサーは女性へのプロモーションに向いている、男性へのプロモーションに向いている、などの理解はあったものの、システム的に絞りこめるのはプランニングしていく上で非常に役立ちます。
和泉さん:広告主によってはフォロワーの属性を非常に気にされたりするので、iCON Suiteのデータをもとにして議論するようにしています。
各SNSのユーザー像として、「Facebookは年齢層が高い」「Instagramだと、若い」「Twitterだと、すごく若い」、といった一般的なイメージはありますが、iCON Suiteのデータは、それを実証していますね。
クライアントに対しては「インスタグラムでのプロモーションは20-30代に届く」、ということの裏付けができました。
鈴木さん:はい。インフルエンサーを選定する中で、過去に蓄積してきたリスト以外からも新しいインフルエンサーを容易に見つけ出して加えられるというのは、非常に活用できたポイントです。
広告主も自分たちも知らないインフルエンサーが発見できて、その属性も分かるというのは大きいです。
「何かのきっかけで突然フォロワーが急に増えた人」、「もともと著名な方で、最近SNSをはじめてフォロワーが急増している人」、「その界隈では人気があってフォロワー数が多いのだけれど、一般的な知名度が低いため、把握できていない人」、そういった方々は有力な提案候補です。

iCON Suite のインフルエンサーデータページ
モードメディアがインフルエンサーと共に目指す未来
鈴木さん:海外、特に東南アジアのインフルエンサー検索です。
東南アジアは力を入れていきたい領域で、日本企業・現地企業、両方からのニーズがあります。
例えば「日本の商材をアジア展開をするうえで、地元のインフルエンサーに取り上げてもらう」、または「旅行者が日本に来る前に、日本にどういう見どころがあるのか、現地のインフルエンサーに紹介してもらう」などです。
やはり、同じ地域の人が語るというのは説得力がありますので。
他には、月間の投稿数やファンの増加率を基にインフルエンサーを検索できると良いですね。そうすると、いま活発なインフルエンサーが誰かわかりますので。
あと、これは色々とハードルが高いかもしれませんが、インフルエンサーの起用の相場が出ると…。クライアント側の予算が決まっている場合は、起用相場で絞り込む方が効率的なのと、インフルエンサーを選んでプランニングした結果が果たしていくらになるか、分かると良いですね。
和泉さん:マーケットを俯瞰すると、2020年の東京オリンピックが契機となって、インバウンド関係のプロモーショーンが活発化するなかでインフルエンサーの起用ニーズは間違いなく高まると思います。
モードメディアとしては、東南アジアに対するインバウンド、アウトバウンドのプロモーショーンへ注力したいと思います。
かつ、メディアとインフルエンサーとを、組み合わせて提案することで、新しい価値創りをしていきたいと思っています。
私たちはインフルエンサーをコンテンツのクリエイターとしてリスペクトしています。特徴あるコンテンツを作れる人が次々と世の中に出ていくことを応援したいです。
そして、広告主やインフルエンサーと一緒に市場を作っていきたいと思っています。
インフルエンサーマーケティングの世界では”老舗”と呼べるモードメディア・ジャパン。これまで培ってきたGLAMなどの自社メディアと洗練されたアドネットワーク。その広告メニューの一翼にインフルエンサーが加わったのは非常に自然な成り立ちだと感じます。また、これまで育んできたインフルエンサーとの信頼関係を大切にし、今後も一緒に市場を作っていきたいという発言が印象的でした。
鈴木さん、和泉さん、貴重なお話をありがとうございました!