MCNの枠を越えて、メディア企業へと成長するアメリカのMaker Studios社

Maker Studios社と言えば、米国最大級のMCN(マルチチャネルネットワーク。YouTuberのネットワーク)で、2014年3月にウォルト・ディズニー社に500億円で買収され話題となりました。
同社はMCNや、その他のYouTubeビジネスの一つの方向性、として世界中から注目を集めています。
RIPPLYでも継続的にその動向を追っていきたいと思います。
今回は、2015年にディズニーによる買収から1年を経過したMaker Studiosが行った発表について、DIGIDAYの記事をご紹介します。
「YouTuberの広告枠を売り買いできるプラットフォーム」まで持っているMaker Studiosは、もはや別次元の存在です。

Maker StudioはMCNの枠を越えて

Maker Studio社はこれまでMCN(multichannel network)として活動してきたが、NewFrontsのプレゼンテーションの中では自分たちを定義するのにMCNという言葉は使わなかった。
代わりに、Maker社は自らがゲーマー、パンクスター、ファッショニスタ、アスリート、オタク、といった人々が集う巨大なコンテンツ工場であることを強調した。

プレゼンテーションの内容

ディズニーがMaker社を買収した一年後、トップMCNであるMakerは、自らのNewFrontsイベントで、どのように親会社ディズニーのブランドを活用するかについて発表した。
代表のYnon Kreiz氏によると、
Maker社のビデオネットワークは巨大な規模を持つ(5,000のチャンネルを通じて、月間100億の動画再生)だけでなく、新しい放送番組表はディズニーブランドとの融合で、MarvelからESPN(スポーツチャンネル)まで、と非常に豊富になったという。
Maker社のチーフストラテジーオフィサーであるCourtney Holt氏が語ったところによると、
「ディズニーのブランドに機会を提供できることを楽しみにしている。私たちは数百回にも及ぶミーティングを行い、Maker社が何が出来るのかを理解してもらった。」
という。
Maker社は30ものプロダクションと一緒に、200以上の番組を現在準備している、とKreiz氏は言う。
そのうちいくつかのコンテンツはスパイダーマン、アベンジャーズといったMarvelの作品を中心にしたものだと思われるものの、Maker社は具体的にはどのMarvelの作品かは明かさなかった。
またMaker社は、ESPNが運営するX Gamesとのパートナーシップを明らかにした。
そこでは、この夏からトップのエクストリームスポーツのアスリートとMaker社のクリエイターをマッチングさせるという。
そしてMaker社は「I AM Maker」というMaker社の伸び盛りのYouTubeスターに関するドキュメンタリーを発表した。
ディズニーが所有する放送局であるABC Familyで放送予定とのこと。
Kreiz氏は語る。
「1年で大きく変わった。世界最大のメディア企業であるウォルト・ディズニー社の一員となって、私たちは世界で最も愛されているブランドや作品にアクセスできるようになった」

今後の見通し

Maker社の番組表には、主要なWeb動画カテゴリー(ゲーム、コメディ、食品、ファッション)のヒット作品がある。
多くの人にとってそのヒット作品はおなじみの名前ではない(ERB, Epic Rap Battles of Historyと、Top Gearとではまるで違う)が、テレビや映画と比較して、低コストで制作されてMakerの番組表はますます賑わっている。
■Holt氏のコメント

  • 私たちのコンテンツの見た目の印象について、弁明をする必要はなかった。なぜなら、何億という人々が見てくれたから
  • 広告主に必要なのは、予測可能性と納期。そこで私たちは納期通りにコンテンツを制作している。時々質と価値が異なることを指摘する人がいるが、私はどちらも同じものだと思う

■Maker社の chief content officerを務める Eric McPhersonのコメント。

  • Maker社はブランド広告主とクリエイターをコラボレーションさせる「Maker Offers」というプロダクトを持っている。
  • それによって何百という広告キャンペーン、つまり2,500万ドルを越えるスポンサー費用を獲得しているという。

■Maker’s sales chiefを務めるJason Krebs氏が紹介したMarvelのキャンペーン。

  • 300名のインフルエンサーたちが、どのAvengerになるか、というのを動画コンテンツとインフルエンサーたち自らのソーシャルアカウントでシェアした。
  • このキャンペーンは24時刊で1億回も表示されたという。

■Makerが発表した新たな広告プロダクト「Maker Select」

  • Outrigger Media社の持つOpenSlate(空き番組枠)の技術によって、広告枠の買い付け(メディアバイイング)を行なうプラットフォームである。
  • これによって、マーケティング担当者はMakerを通じて、あらゆるYouTubeメディアの枠を買い付けることができるようになる。
  • そこでは、コンテンツの品質と、ブランドセーフティ(企業ブランドにとって健全か)を基準としたマッチングアルゴリズムが用いられる。
  • そこにはNielsenのデータに基づくオンラインキャンペーンの品質保証が行われているのだが、
  • これによってデモグラフィックターゲティング(年齢性別)を可能にし、広告枠の透明性を担保されている。
  • DigitasLBi と Starcom MediaVest Group が彼らのクライアントにMaker Selectを提供する

補足

Maker社のカルチャーが伺えるとある一幕

朝。
とある一団がSkylight Clarkson スクエア(west SoHoにある今風な倉庫スペース)に次々と入っていく。
Makerの朝はジュースやカクテルとともに始まる。その出席者(と、プレゼンター)は大いに飲み食いをする。
メイン会場は暗くて寒々しく、大勢の人が並んで大声で話しており、聴いている方は喧騒の中でしっかり聞いている。

注目のコメント

Maker社Holt氏のコメント
「突き詰めると、ヒットしたものがヒットだ。そしてデータは必ずしもヒットを産んではくれない。ある出版社が小説のクラウドソーシングを試したが、それは実にくだらなかった。人は実際に手に入れるまで、実際は何が欲しいかなんて分からないのだ。」

広告出稿サイドより

Razorfish社のアソシエイトメディアディレクターMagda Alvarezのコメント。
「Maker社のMarvelやESPNとの新しい戦略的提携とともに、名前を挙げられたタレントたちは、とても印象的で、かつミレニアル世代の視聴者非常にフィットしている。
予期しなかったところといえば、Maker社が彼ら自身が持っている枠の外に向けて、彼らのコンテンツを拡張していくような技術へ積極的に投資していることだ。」

ニュースソース
DIGIDAY
Maker Studios wants to go beyond the MCN label