自社にとって最良のインフルエンサーとは? 海外コスメブランドの事例

事業者が自らインフルエンサーを抱えるというケースが、アパレルブランドなどを中心に増えています。
例えば、「原宿系」と呼ばれる若者向けアパレルブランド。
店舗には、Twitterでたくさんのフォロワーを持つインフルエンサーがショップ店員として働いていることがあります。
店員はTwitterで出勤情報をつぶやき、店員目当てに来店するファンも多いとか。
海外では、さらに組織的で大掛かりな「自社スタッフ・インフルエンサー化」の事例が出てきているようです。

社員スタッフをVlogger(ビデオブロガー)にする美容ブランドの狙いとは

有名企業が続々とソーシャル・プラットフォームを利用している中、コンテンツを充実させ続けなければいけない、というプレッシャーと、それに伴う高いコストが懸念されます。
そこで、美容ブランドのBenefitは、高価なインフルエンサーを雇う代わりに、自社のスタッフに目を向けています。
今月、BenefitのYouTubeチャンネルは、初めて、自社スタッフによるメイクアップ・チュートリアルを公表しました。


このビデオを作成したAmelia Forsterは、南東イングランドのChichester市にあるBootsという薬局チェーンの店舗でBenefitのカウンターで働くスタッフで、19名の応募者の中から勝ち抜き、動画を自ら制作しました。
Benefitは動画プラットフォームのSeen Itを介して、スタッフが制作しているコンテンツを管理しています。
これによって費用対効果が高く、メッセージ性も強い「マイクロインフルエンサー」を作り出しています。
注:Seen It
https://seenit.io/
企業のスタッフとインフルエンサー・ブランドアンバサダーとの動画の共同制作を支援するサービス
「インフルエンサースタイルのコンテンツは、洗練されすぎた企業主導型のコンテンツよりも効果的なのは明らかです、そしてSeen Itを使えば匹敵するスタイルのコンテンツを簡単に作ることができます。
お客様が店舗を訪れた際に経験するサービスのデジタル版を自宅の快適さの中で体験できるのです。」
と、Benefit UKデジタルマーケティング総括のMichelle Stoodley氏は語っています。
Benefitの2,200人の小売り担当従業員は「benebades」と呼ばれ、すでにソーシャルメディアで活躍しています。
(Instagramのタグを参照:#LifeAtBenefit) 
彼女らの中には動画投稿とブログの両方を使ってオーディエンス獲得を図るvloggerがいます。

そして、Lauren Curtisというインフルエンサーの成功がモデルケースとされています。
彼女は元化粧品販売員で、そのプロム用メークアップチュートリアル動画は800万ビューを記録しています。
プロム(Prom)とは、プロムナード(米:promenade、舞踏会)の略称で、アメリカやカナダの高校で学年の最後に開かれるフォーマルなダンスパーティーのこと。

社員が作る動画を、自社のコンテンツとして

このような社員たちは、より多くのフォロワーを獲得するために、コンテンツを無料で提供しています。
Benefitは公開されるコンテンツの最終的な決定権を持っていて、すぐに映像を選択、編集することができます。
(通常のYouTubeのコンテンツ作りのために、チームは先週スタジオで丸1日を費やし、10本の動画を通しで制作していました。)
こういった社員の動画は月に2回、他の美容やライフスタイルのレギュラーコンテンツと共にBenefitのチャンネルで公表されます。
「もしこれらの動画が人気になれば、Facebookのストリームに定期的に載せていくこともありえるかもしれません。
ただ、まだ、何を成功とするのか指標となるものがありませんが。」とStoodleyは話していました。
さらに飛躍して、Benefitは、ファンが制作したコンテンツに目を向けています。
今後、それらをハイスペックな動画と一緒に展開していくかもしれません。
「私たちは、典型的な磨かれて洗練された美容ブランドとは違います。だからこういった新しい取り組みも率先して行っています。
私たちはまだ完成されてはいないのです。」 
と、Stoodley氏。

UGCが人々の購買の意思決定の大きな動機に

ユーザーが生み出すコンテンツ(UGC:User Generated Contentあるいは、CGM:Consumer Generated Medium)は今、消費者にとって”社会的証明”という、一つの重要な指標になっています。
伝統的なブランドメッセージに対して懐疑的であるミレニアル世代にとっては特にです。
Crowdtapの調査によると、18歳から36歳の人たちにとっては、ユーザーが作ったコンテンツのほうがほかのメディアよりも50%信頼度が高く、さらに、購入決定に与える影響は20%高いことがわかっています。
Benefitは社員が制作したコンテンツを現在関心の高まっている眉関連の商品に活用できないかと考えています。
眉関連商品は美容市場のわずか3%に過ぎず、ほとんどのカスタマーは眉製品を買ったことがありませんので、動画チュートリアルを参考にしてもらえるはずです。
「これがカスタマーが見たいと思うコンテンツで、私たちはベストな顧客との接点になると思っています。」 と、Stoodley氏。
Benefitの5人編成のソーシャルチームは、YouTubeやFacebookに加えて、SnapchatやPeriscopeでも実験的に動画配信を行っています。
さらに、Facebook Liveでは他の企業や出版社(Glamourなど)ともパートナーシップを結んで可能性を探っています。
今のことろFacebook Liveでは、ヘッド・メークアップ・アーティストのLisa Potter-DixonをフィーチャーしているBirchboxのチャンネルで1,7000ビューに届こうとしています。

顧客目線での、顧客に寄り添ったコンテンツのみが受け入れられる

「結局は個人から個人へのつながりなんだと思います。
コンテンツをコンテンツのために作る事から離れて、カスタマーの生活に寄り添ったコンテンツを作っていこうと思っています。
常に、何かをしようとするたびに、”これは、ファンの子たちにとって、今日この時間に、興味関心のあることかしら?”と、一度、手を止めて考えます。」
とStoodley氏は述べています。