インフルエンサー・マーケティングを検討したことがある皆さまの中で
「ステマにならないかな。」
という不安を抱かれた方は非常に多いのではないでしょうか?
本稿では、ステルスマーケティング(ステマ)の定義や問題点を再整理します。
インフルエンサー起用時に思わぬ落とし穴に嵌らないようにしましょう。
1) ステルスマーケティングに対する世の中の流れ
ステルスマーケティングとは以下のように定義されています。
「マーケティングの手法のうち、それが宣伝であると消費者に悟られないように宣伝を行うことである。」
(Webilo辞書)
2012年頃、口コミメディアで「ヤラセ投稿」を行う業者に対して、消費者庁が調査に乗り出すというニュースがたびたび報道されました。
また、一部の芸能人が自身のブログにおいてステルスマーケティングに該当する商品紹介を行っていたことを告白しました。
こうして「ステマ」という言葉の認知度が広がりました。
2015年は「ステマ問題」が再燃した年であるといえます。
- 3月:一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)がネイティブアドの定義と推奨規定を発表。
- 7月:「Yahoo!ニュース」に一部ノンクレジットのネイティブ広告/タイアップ記事が配信されている件にヤフーがYahoo!ニュースのスタッフブログで「悪質な行為」であり「積極的に排除し、撲滅したい」と表明して話題に。
- 7月:UUUM社が同社のブログで「当社における動画タイアップに関する提供表示ルールについて」という記事を投稿し、ステルスマーケティングの防止に対する強い意向と具体的な方針を打ち出す。
このようにして、広告業界やクリエイター全体に対応の機運が一気に高まりました。
2) ネイティブ広告の定義と推奨規定について
ここで改めてJIAAによるネイティブ広告の定義と推奨規定を確認しておきましょう。
ネイティブ広告は以下のように定義される広告です。
デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式
や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報
利用体験を妨げない広告を指す。
(JIAA「ネイティブ広告の定義と用語解説」)
この定義に従うと、記事広告のみならずインフルエンサーを活用したマーケティングもネイティブ広告に含まれると考えられます。
このため、メディアや動画配信者だけでなく広告主となる皆様も「広告にどのような対応がなされていないと問題になりうるのか」について正しく理解をしておく必要があります。
同JIAAの「ネイティブ広告に関する推奨規定 」をみると様々な条件に対して、
- 「広告表記」
- 「広告主体者の明記」
- 「広告審査」
の3つの観点から言及されています。
要約すると、
- 「 広告 / PR / AD などの表記をつけて広告であることをきちんと記載しなさい」
- 「責任者を明確化するために広告主を明示しなさい」
- 「メディアとしての責任のもときちんと広告審査を行いなさい」
ということが書かれています。
3) 動画配信者や動画メディアの対応について
上記の推奨規定やガイドラインに対して動画配信者やメディアはどのような対応を行っているでしょうか?
ここでは、先ほど言及したUUUM社が発表したガイドラインが非常にユーザーの行動も配慮している優れたものですのでご紹介します。
ガイドライン
- タイアップ時、動画内(冒頭部分)に「提供」もしくは「タイアップ」の表記を行う。その際、クリエイター本人 あるいは チャンネルアイコンの表示、もしくは文字での チャンネル名やクリエイター名の表示も同時に行う。
- タイアップ時、動画内に広告主体者(企業もしくは商品・サービス・ブランド名)を明示する。
- 表示時間は 3秒以上とする。(提供表示をアニメーションさせる場合は完全に提供表示を認識できるときから3秒以上とする。)
- 文字の縦幅は最低でも画面の 8分の1以上。文字色は背景色と同化しないようにする。
- 動画概要欄は提供orタイアップであることを必ず一行目に明示する。
ポイントとしては、彼らが主戦場としているYouTubeの特性をきっちり理解し、その機能に合わせるように掲載場所や掲載方法をかなり細かく指定していることです。
特に、動画概要欄の「一行目に」という点はYouTubeの検索結果でも視認できるように配慮されており、動画を使ったプロモーションに関わる方にはぜひ参考にしていただきたいです。
また、「動画の冒頭に」という点に関しても動画が他のサイトへ貼り付けられることを考慮しています。
その他の秒数やサイズに関しても、「スマートフォンで見ても視認できる」ことなども配慮された規定ではないかと推察できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?市場環境を鑑みると、皆さまの中でもステマという言葉に少し敏感になっているという方もいらっしゃるかと思います。
しかし、本稿で整理させていただいた通り、JIAAによる推奨規定は明確であり、きちんと趣旨を理解すれば対応は難しくありません。
また、使用するプラットフォームの特性や機能を理解することで、消費者にとってよりフレンドリーな表記を行うことができます。
インフルエンサー・マーケティングは非常にパワフルで可能性に満ちた手法の一つです。
一方で、消費者は騙されることを非常に嫌います。またそのような意図がなかったとしても、騙されたと感じるだけでブランドに対してとても大きなダメージとなり得ます。
ぜひ、本稿を参考に「ステマ」に対しては細心の注意を払いながら、インフルエンサーを通じて消費者と深いコミュニケーションを取っていきましょう。